「TPP亡国論」「国力とは何か」など、複数の有害図書を出し、民族系御用メディア「チャンネル桜」等でも多数の番組に出演しています。
今回は、その偏向ぶり、そして、真っ赤な嘘の一例をご紹介しましょう。
亡国最終兵器-TPP問題の真実(チャンネル桜叢書)より、一部引用
『インフレっていうのは需要が多すぎて供給が少ない。デフレというのは逆に需要が少なくて供給が大きい。インフレ及びデフレというのは、この状態が続くことですので、当然、対策は、インフレとデフレでは真逆になるはずです。インフレの場合は、財政健全化を目指して、政府支出をカツトしてもいいですし、増税してもいいし、小さな政府でもいい。なぜなら、政府の公需が大きすぎるので、インフレだということで、ここを小さくする。金融は引き締める。
一方、供給不足なので供給力を強くする、さらに生産性の向上ということで、規制緩和、競争促進、非効率部門の淘汰ということをやるわけですね。
こういった観点から、これを国際的なレベルで供給力を強化する、価格を下げていくことが貿易自由化っていうことですね。
デフレは原因が逆なので、対策も逆になるはずです。したがいまして、政府支出を今カットするのではなくて、積極財政でよい。投資減税をやる。それから公務員は減らすのではなくて増やす。大きな政府にする。とにかく需要を増やすということでよい。インフレの時は、金融を引き締めましたが、デフレは金融緩和です。』(「亡国最終兵器-TPP問題の真実」チャンネル桜叢書、54頁)
⇒全くもって、意味不明です。
中野によると、「貿易自由化はインフレ対策」らしいです。
とんでもない珍論に目を疑いました。
自由貿易の目的は、経済学の授業でも習いましたが、消費者余剰と生産者余剰の増大(=社会余剰の増大)などが主な目的じゃなかったっけ?
http://home.kanto-gakuin.ac.jp/~morisaki/002economics/econ22.htm
そもそも、自由貿易協定を「インフレだからやりましょう」「デフレだからやめましょう」と、コロコロ変えられたのでは、それを前提に国際分業体制を取っている企業などは、たまったもんじゃありません。
読者の皆様が、仮に中小企業の経営者で、「インフレ時に結んだ自由貿易協定」を前提に、例えばマレーシアに大型投資をして、工場を作って、現地従業員を雇っていて、今度はいきなり「デフレになったから自由貿易は止めます」政府に言われて、人、モノの移動規制、高率な関税をかけられたら、どう思いますか?
それで銀行から借りたカネが返せなくなって倒産したら、誰が責任を取るんでしょうね?
これが経済産業省に在籍する役人の話とは思えません。
詐欺師、国賊の類です。
『オバマ大統領も、雇用、雇用、雇用と。彼にとって、TPPは貿易自由化じゃないんですよ。彼にとってTPPは、一雇用の確保なので、彼の論理は正しいんですが、デフレは雇用の確保ということになります。
そうすると、供給力を下げるということなので、競争をあまりしないってことになるので、自然体でもそうですが、企業というのは大きくなる傾向があります。合併、統合、整理、合理化、設備投資の廃棄、それから、よく言われるワーク・ライフ・バランス、これも競争しないで、みんなで雇用を確保しようということ。それから、社会的規制は強化される方向ですし、労働市場は、柔軟にしたり、自由化したりするのではなくて、保護する方向になる。これでいくと、貿易の管理、場合によっては、保護主義も可という対策になります。
事例を挙げますと、インフレの時は、まさに、サッチャーリズム、レーガノミックス。サッチャー、レーガンというのは、当時の70年代から80年代初頭の英米がひどいインフレに悩んでいたので、小さな政府路線をやったということでございます。構造改革は、サッチャー、レーガンを見本としてやったんだとしたら、それは、インフレ対策をやっていたんです。
構造改革が始まった頃というのは、資産価格がいきなり半減するというバブル崩壊の時だったので、デフレを気をつけなきゃいけなかつた。その時、サッチャー、レーガンのインフレ対策を見本にして、やったので、日本が本当にデフレになってしまった』(「亡国最終兵器-TPP問題の真実」チャンネル桜叢書、55~56頁)
チャンネル桜の討論番組等で使用している次の表が出てきます。
↓
⇒よくぞ、ここまで嘘を言えたものだと、逆に感心します。
まず、インフレの定義を、どのように考えているのか、脳内構造を疑います。
あの、フィリップス曲線の話(失業率とインフレ率の関係)も知らないのでしょうか?
失業率とインフレ率は、1960年代まではトレード・オフ関係にありましたが、そうではない事態が現実に起こり(失業率と物価上昇の同時進行、スタグフレーション)、そこで登場したのがノーベル経済学賞を受賞した、かの有名なミルトン・フリードマンの自然失業率仮説、貨幣錯覚仮説、k%ルールです。
また、サッチャーリズム、レーガノミックスが「インフレ対策だった」とは、初耳です。
サッチャーやレーガンは、「デフレだったらジャンジャン国債を刷りまくる」「公共部門を肥大化させる」とでも言うのでしょうか?
初耳というのは、中野の創作、デッチ上げだからでしょう。
以下、M.サッチャー著「サッチャー回顧録・上巻」日本経済新聞社より引用
『1945年に第二次大戦が終わって目を覚ました時には、イギリスは世界共通の文明を守るため多大な軍事力で消耗しきっていたばかりでなく、長期に渡って経済的、財政的な貧血症を患う国になっていたのだ。
1945年にアトリー労働党政権が発足し、この相対的な衰退を食い止め、再起に転じさせょうと試みた。
それは、社会主義、社会民主主義、国家主義、あるいはバツヶライトなど、どんな名前で呼ぼうと、中央集権的、管理的、官僚的、介入的な政治手法に沿う試みであった。イギリスの政府は二つの戦争の間に肥大化した結果、すでに巨大で扱いにくくなっていたが、まもなくすべてのことに首を突っ込むようになった。
労動にも、企業にも、消費にも、富の移転にも高い税金をかけるようになった。都市、農村、工業、科学などすべての分野で開発を計画した。マクロ的には財政運営というケインズ手法により、ミクロ的には各種の基準に応じた地方補助金と産業補助金の交付により、経済を管理した。政府は企業の所有権を獲得すること、あるいは民間企業の決定を政府が望む方向に抑え込むような規制の力を行使することによって、直接的・間接的に産業を国有化した(アーサー・シェンフィールドは次のように説明している。公共部門と民間部門の違いは、民間部門が政府によって支配されているのに対し、公共部門は誰によっても支配されていないことだ)。政府は、様々な形の福祉を広範な種類の状況 ― 貧困、失業、大家族、老齢、事故、病気、家庭不和など ― に応じて通常誰にもばらまいた。自分自身の財産や家族、友人の支援に頼りたいという人かいると、政府は広告キャンペーンをやって、政府を当てにすることの美徳を国民に説得する始末だった。
このようにあらゆることに及ぶ介入主義がよしとされた理由は、かつての労働党閣僚ダグラス・ジエイの言葉を借りれば、「ホワイトホール(官庁街)のジエントルマンは、何が国民にとってよいことかを当の国民ょりもよく知っている」ということだった。最善、最新の情報を手にすることができる公平な官僚機構の方が「いわゆる自由市場」の行きあたりばったりの盲目的な力よりも、経済的な可能性を予測し、それらへの対応を考え出す能力をもっているというわけであった。
労働党はこのような考え方を明快かつ明瞭に掲げた。同党は、計画化、規制、統制、補助金などを誇りとした。将来に関する同党のビジョンは、東ヨーロッパの集団主義とアメリカの資本主義の中間にあって民主社会主義としての第三の道を行くイギリス、というものだった。そして、その原則と政策の間には大ざっぱな一貫性があった。労働党より左派の陣営がいうほどのペースの変化は求めないにせよ、政府の拡大を求めたことである』(16頁~17項)
※サッチャーはイギリスの衰退の原因について言及しています(今の中野や三橋の主張と、イギリス病をもたらしたイギリス労働党の政策は酷似しています)
『1950年代、金融緩和によって需要を創出した結果、若干の物価上昇を引き起こす前に実質生産の上昇と失業の減少をもたらしたが、それが今や高率のインフレとなって姿を現しており、生産や失業のグラフにも一時的な現象とはいえない影響が出ていた。国が補助金を与え、投資の方向付けを行ったため、ますます非効率な産業が増え、投資収益は低下する一方となった』(18頁)
『イギリス病を社会主義で治そうとするのは、白血病をヒルで治療しようとするのに似ている』(19項)
『自由市場は巨大で感度の高い神経系統のようなものであることを心得ていた』(23頁)
『インフレは通貨上の現象であり、それを抑制するためには金融の規律が必要なのだ。物価上昇はインフレの兆候であって、インフレの原因ではないのである。インフレは通貨上の現象であり、それを抑制するには金融の規律が必要なのだ。物価を人為的に抑えても、投資を減少させ、収益を弱めるだけだった。投資も収益もすでにあまりにも低水準に落ち込んで、イギリス経済の健全性を損ねていた一方、"コスト・プラス"(コストに上乗せ)の心理がイギリスの産業界に行き渡っていた』(49項)
本物と偽物を見分けるには、「自分自身で元の証拠資料を調べる」という基本を忠実に実行すれば良いだけです。
三橋貴明と国家ビジョン研究会・鳩山由紀夫との関係も、同じです。
西部邁と昵懇である中野剛志の仮面を、これから、シリーズ化して剥がしていく予定です。
社会不安の時期には新興宗教が流行りますが、そのようなものに騙されないように気をつけましょう。
(ご参考)
解毒薬として、『サッチャー回顧録』を読まれることをお勧めします。
これ見てね。以上。
返信削除↓
http://megu777.blogspot.jp/2012/04/blog-post.html
>ヒドイ事実誤認ですね。
返信削除>どちらもスタグフレーション、つまり悪性のインフレに悩んでいたので、インフレ退治が目的の政策だったのですよ。
>もっと勉強して妥当な意見を展開して欲しいです。
そっくりそのままお返しします。
インフレとデフレの定義を恣意的に使い分けているのは中野と三橋ではないですか?
デフレの定義を、あるときは「物価の持続的下落」とし、またあるときは「需要<供給」とするのは、三橋・中野や貴殿ら信者たちではないのでしょうか?
インフレ(物価の持続的上昇)と需給ギャップの関係は、必ずしもトレードオフ関係にならないことは歴史が証明しています。
スタグフレーションを引き起こした過去のイギリス労働党の政策と三橋や中野の主張とは酷似しているにも関わらず、あえてそこに言及しないのは、詐欺師の所業でしょう。
>このブログはあまりにもウソが多すぎます。
どこに嘘があるのか、証明してみせよ。
嘘を並びてたて騒いでいるのは、三橋、中野、西部らと、その信者たちではないのでしょうか?
TPPには利害関係がありますし、そもそも多様にわたる専門分野の話しです。今問題になっているデフレからの脱却論争は国民の問題ではありません。国民一人一人が何の職につき何の利益を得ているかによるのです。このTPP推進派は明らかに利益側。しかし、多くの国民にとっては害となります。あなたは自由に選択できると言いますが、あなたが選択できるまでに先の将来世代の雇用確保は出来ていますか?まず、このTPPは他のアジア諸国を見習って見送りにするのが一番得策なはずです。しかし、今の政治家はこのTPPを推進する為に政府が動いてるようにしか私には見えません。
返信削除こんにちは。このブログの考えに、全面同意するわけではありませんが、TPPに関する主張は合っていると思います。私は中野剛志、三橋貴明の人格批判をする気はありませんが、彼らのTPP反対論は無理があります。
返信削除にも関わらず、ネットでは彼らに賛成(つまりTPP反対)する人が大多数です。彼らは反米主義者ではないかと思います。彼らは、太平洋戦争、郵政民営化、TPP、全てアメリカの陰謀だと思っているのです。
当ブログで、TPPのメリットについて詳しく書かれた投稿はありますか?
返信削除>サッチャーリズム、レーガノミックスが「インフレ対策だった」とは、初耳です。
返信削除ヒドイ事実誤認ですね。
どちらもスタグフレーション、つまり悪性のインフレに悩んでいたので、インフレ退治が目的の政策だったのですよ。
もっと勉強して妥当な意見を展開して欲しいです。
このブログはあまりにもウソが多すぎます。
時々、読ませていただいては、
返信削除こういう観点からの理論もあるのだなと
感心させられています。
今回のTPPに関するお話ですが、
中野氏のTPPに関する批判は
その自由貿易協定という名前の中に、
保険や郵便などの行政にまで
海外との競争がもちこまれ、
日本でいままで受けられていた
サービスなどが脅かされる可能性がある
また、一般市民にとってよい意味の
競走なら良いですが、アメリカ企業が
日本での競争に不平等さを感じた場合に
国際裁判によって、制度を変えることが出来る
といった内容含まれている。
よって、TPPに反対・・・だいたい、
このような論旨であったと思います。
私の考えは、現状の行政サービスに
特に不服を感じてはいないし、
海外のように、高いお金を払わないと
救急車も呼べないようなサービスは
できれば止めていただきたいと思っています。
(一例のみしか挙げられないので、揚げ足取りかもしれません)
meguさんがおっしゃっておられるように
私たち市民が自分たちにあったサービスを
選択できる形が、TPPによってもたらされるならば
それにこしたことはないでしょう。
そこで、TPPによってそのような行政の形が
訪れる根拠を教えていただけないでしょうか。