2012年1月22日日曜日

三橋貴明"風説の流布"疑惑

相も変わらず「国債を刷りまくれ」という三橋貴明の言説が流布されている今日ですが、この、ケインズも腰を抜かすような暴論は、何を根拠にして言っているのでしょうか?
彼のデビュー当時の著書を読んでいたら、とんでもない話を見つけてしまいました。


三橋貴明「高校生でも分かる日本経済のすごさ」(彩図社、178~179頁)より引用
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日本政府の隠れ債務とやらは、日本国民への年金債務のことですから、逆に国民側から見れば「隠れ債務」になります。すなわち、「国家のバランスシート」の政府の負債に1000兆円が追加された場合、借方(資産サイド)の「家計の資産」にも1000兆円が加算されることになるのです。結果、日本の家計の資産は「2433.5兆円にまで膨れ上がることになります。
どれだけ金持ちなんだ、日本の家計、という感じですね。参考までに「日本政府の隠れ債務1000兆円」を追加した、日本国家のバランスシートを掲載しておきますね。
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(引用終わり)

(注)この「バランスシート」とやらは、内容を見る限り、次の三橋貴明のブログの数字と同じですので、ご参照ください。


第一回 日本の財政問題に関するマスメディアのミスリード(1/3)2009/05/26 (火) 13:12

http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2009/05/26/005531.php


要するに、こういうことが言いたいらしい。はっきり言って、馬鹿です。ミスリードしているのは、三橋本人。
以下、無知の標本

  ↓

三橋貴明による隠れ債務の計上方法(仕訳)  単位:兆円

(隠れ債権≒未収金) 1,000   (隠れ債務≒退職給付引当金) 1,000





さて、読者の皆様が、仮に上場企業の経理担当者で、上記のような会計処理をした場合、どうなるんでしょうね?
公認会計士から、会計処理の誤りを指摘され、それでも訂正しなければ、会計士による監査報告書は不適正意見となり、上場廃止です。何しろ、ハンパじゃない架空資産の計上がされ、事実上の債務超過を、債務超過でないと言い張って、株主や債権者を騙しているのですから。。

会計監査では、資産の内容の根拠・査定を徹底的にやられます。三橋貴明がいうような、中身の無いテキトーな資産計上など、認められる訳がない。


退職給付会計の会計基準に従えば、積立不足分や将来の回収不能分は費用または損失となるため、バランスシートには負債が増えるだけで、資産は増えません。
意見の相違以前の話で、三橋貴明(中野剛志も含む)が簿記二級レベルの基礎知識すら無く能書きを垂れる恥知らずである証拠です。




企業会計原則 注解18 引当金について
http://ja.wikibooks.org/wiki/%E4%BC%81%E6%A5%AD%E4%BC%9A%E8%A8%88%E5%8E%9F%E5%89%87%E6%B3%A8%E8%A7%A3#18

将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。



「退職給付に関する会計基準」企業会計審議会HPより一部抜粋
http://www.fsa.go.jp/p_mof/singikai/kaikei/top.htm


二  負債の計上                                                          
1  負債の計上額
     退職給付債務に未認識過去勤務債務及び未認識数理計算上の差異を加減した額から年金資産の額を控除した額を退職給付に係る負債として計上する。



三  退職給付費用の処理                                                                       
1  退職給付費用の処理額
    当期の勤務費用及び利息費用は退職給付費用として処理し、企業年金制度を採用している場合には、年金資産に係る当期の期待運用収益相当額を差し引くものとする。なお、過去勤務債務及び数理計算上の差異に係る費用処理額は退職給付費用に含まれるものとする。


http://www.iicp.co.jp/library/learn/article/000614.shtml


(ご参考)

小黒一正 年金財政の課題-現実を帯び始めた「2031年・積立金の枯渇」
http://agora-web.jp/archives/1315055.html


三橋貴明の言うとおり、隠れ債務が1,000兆円であった場合、正しい会計処理は次のようになります。

(退職給付費用) 1,000   (退職給付引当金) 1,000

三橋貴明の「バランスシートもどき」に「隠れ債務」の正しい会計処理を付け加えると、なんと、大幅な債務超過になる!

※「高校生でも分かる日本経済のすごさ」には、公的年金の積立不足について、ほとんど納付率の問題しか取り上げていませんが、問題なのは納付率以上に、少子化です。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai09/kekka2.html

私が三橋貴明のいうバランスシートを「バランスシートもどき」と言うのには理由があります。
そもそも、バランスシート(貸借対照表)を示すなら、なぜ損益計算書を示さないんでしょうね(←日商簿記3級レベル)

そもそも、貸借対照表とは、企業会計原則・一般原則(正規の簿記の原則)に従って作成される財務諸表の一つであると定義されるので、それに基づいていない三橋貴明の作った「バランスシートもどき」など、論ずる価値があるのか疑問です。

(正規の簿記の原則)
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない

三橋貴明が作った「バランスシートもどき」は実態としては、バランスシートではなく、その性質は財産目録に近いものに過ぎません。
ただし、財産目録であるなら、厳しく時価評価が行われるべきですが、それらの評価方法等について一切前提条件が書かれていません(時価評価額は前提条件で大きく変わります)


(例)

・JAバンクの不良債権の査定方法(公認会計士監査が義務付けられておらず、その不良債権の実態は闇の中)
・無形固定資産(のれん、電話加入権等)の評価
・日本国内に星の数ほど存在する非上場企業の株式の評価
・ゴルフ会員権の評価


また、三橋貴明は著書やブログの中で、しきりに「日本国家のバランスシート」を書いていますが、企業会計原則や金融商品取引法、財務諸表等規則(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則)、会社法(特に第97条~116条)についての知識はゼロに近いのではないでしょうか?


企業会計原則注解1-4 注記事項の記載方法について(一般原則四)

重要な会計方針に係る注記事項は、損益計算書及び貸借対照表の次にまとめて記載する。なお、その他の注記事項についても、重要な会計方針の注記の次に記載することができる。


財務諸表等規則

(重要な会計方針の注記)
第八条の二  会計方針については、次に掲げる事項を注記しなければならない。ただし、重要性の乏しいものについては、注記を省略することができる。
一  有価証券の評価基準及び評価方法
二  たな卸資産の評価基準及び評価方法
三  固定資産の減価償却の方法
四  繰延資産の処理方法
五  外貨建の資産及び負債の本邦通貨への換算基準
六  引当金の計上基準
七  収益及び費用の計上基準
八  ヘッジ会計(ヘッジ手段(資産(将来の取引により確実に発生すると見込まれるものを含む。以下この号において同じ。)若しくは負債(将来の取引により確実に発生すると見込まれるものを含む。以下この号において同じ。)又はデリバティブ取引に係る価格変動、金利変動及び為替変動による損失の危険を減殺することを目的とし、かつ、当該損失の危険を減殺することが客観的に認められる取引をいう。以下この号及び第六十七条第一項第二号において同じ。)に係る損益とヘッジ対象(ヘッジ手段の対象である資産若しくは負債又はデリバティブ取引をいう。第八条の八第三項及び第六十七条第一項第二号において同じ。)に係る損益を同一の会計期間に認識するための会計処理をいう。第八条の八第一項及び第三項において同じ。)の方法
九  キャッシュ・フロー計算書における資金の範囲
十  その他財務諸表作成のための基本となる重要な事項



そもそも、こんな、「国家のバランスシートもどき」なんぞ、何の意味があるのでしょうか?
・前提条件の開示なし(日銀の資金循環表が基礎データらしいが、それ自体、バランスシート作成のための十分な要件を満たしていない)
http://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/faqsj.htm/
・貸借対照表と一体の関係にある損益計算書なし
・「政府債務=国民の資産」論の出鱈目(国民の私有財産を為政者が勝手に使い込むことなど自由主義社会では認められない)


はっきりいって、意味がない。

とても貸借対照表(バランスシート)と呼べないものを未だに吹聴していて、恥ずかしくないのでしょうか?


小黒一正氏は、隠れ債務を800兆円と試算していますが、仮に800兆円をこの「バランスシートもどき」にあてはめた場合、やはり、日本は国家として債務超過になります。
実は債務超過であるが、国民(将来世代も含む)の資産を担保にして自転車操業で資金繰りを工面して凌いでいるのが現実でしょう。



恥の上塗りになるので、三橋貴明はこの「バランスシートもどき」を出すのはやめておいた方が良いと、個人的には思いますが、全く気付く気配もない。


例の、国家ビジョン研究会と鳩山由紀夫の関係についても、一切説明がないし、どうなっているんでしょうね。

三橋貴明のバカ理論、年金の話、TPPのインチキ解説については機会を改めて更に拙ブログで追及したいと思います。
しかし、今後も懲りもせず、この出鱈目な「バランスシートもどき」を持ち出して、「日本は金持ちなんだから、もっと国債を刷って財政出動をやりまくれ」というのなら、バカを通り越して、別の狙いの可能性を疑います


風説の流布

金融商品取引法
http://www.houko.com/00/01/S23/025.HTM#s9

第158条(風説の流布)
何人も、有価証券の募集、売出し若しくは売買その他の取引若しくはデリバティブ取引等のため、又は有価証券等(有価証券若しくはオプション又はデリバティブ取引に係る金融商品の相場の変動を図る目的をもつて、風説を流布し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をしてはならない。


第197条(罰則)
5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する



(ご参考)

まだ全く説明がありませんね。

・著書の内容と討論での発言が全然違います
http://megu777.blogspot.com/2011/11/blog-post.html

・国家ビジョン研究会、鳩山由紀夫との関係での嘘つき疑惑についての説明責任
http://megu777.blogspot.com/2011/12/blog-post_17.html

5 件のコメント:

  1. >政府債務が国内で消化されている事を表すために、B/Sを国全体に敢えて援用したもの


    もう、何度も言っていますが、「所有権」「私有財産」なる概念はどこへ行ったのでしょうか?

    全く資産を所有している主体が異なるのです。

    それから、それ以前に、三橋は退職給付引当金の会計処理を間違えています。
    商業高校の簿記のレベルの間違いです。

    よって、論外です。

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  2. 柳生様

    はじめまして。
    三橋貴明氏のブログには、書き込んだことがありますが、ブロックされて掲載されませんでした(国家ビジョン研究会の件)。
    で、Twitterで、しつこく本人に事実関係を問い合わせておりますが、一切反応がありません。

    また、チャンネル桜の掲示板でも書いたことがありますが、それも完全スルーされました。

    ちなみに、『日本経済をボロボロにする人々』では、何度かコメント、議論をさせていただいております。
    http://blog.livedoor.jp/nnnhhhkkk/ 

    ただ、これまでの経験上、論理ではなく感情で動く人には何を言っても無駄だと感じています。ブログをご覧になられた方が、各々でご判断いただければ良いかと思います。

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  3. 初めまして、takuと申します。
    三橋氏はそもそも政府債務が国内で消化されている事を表すために、B/Sを国全体に敢えて援用したものと理解しています。
    よって、その指摘はあまり意味が無いと思いますよ。

    そして政府は国民が運営しているものですから、十分に長い目で見れば「民間資産と政府資産がごちゃまぜ」というのはおかしくないでしょう。というか外国から見たら結局そうなるでしょう。

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  4. ははは頑張ってられますね。まあ、私としては本当は好景気不景気関係なく日本の元々の文化が保たれてほしいなと思っております。
    ところで、上の記事を拝見いたしましたが、政府の隠れ債務がもし1000兆円もあったら、ちょっとびっくりなのですが、債権者はどこの人でしょうか?外国?それとも日本?
    う~ん怖いですね~ 

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  5. 初めまして、NEATと申します。初見で思った感想は、日本のことを思ってくれる素晴らしい方だな。と思いまいたが、なぜか好きになる人物、キライになる人物が、僕と全く逆なんですねぇ。
     そこでいろいろ読ませていただいて、僕は、知的に優れているあなたにも、一つ大事な見落としがあることに気が付きました。
     唐突ですが、普段の生活でも、なぜか「いつも意見がいっしょだったのに、突然裏切られる」なんてことはないですか?たぶん、そういう心当たりがきっとあると思います。なぜなら、meguさんの判断力はものすごく正確無比ですが、むしろそこに欠点が隠されているからです。
     その鋭い視点には、寸分の隙もなく、「この人は事実と相違したことを述べている」と即座に判断なさるのだと思います。しかし、事実と違っていて当然なんです。人の「発言」というのは、「ある結果」を得るために発せられます。つまり、「結果」がほしいために発言するのです。ということは、『嘘を言わなければ得ることができない結果』というものもあるはずです。
     meguさんの今まで触れてきた動画や本にも「意図的に」無知な者に対して誘導することができるように「それらしく」表現されている情報が含まれています。これは、あなたのような知的な人には効果がありません。それどころか、反感を持たせてしまいます。しかし、「無知な大衆」には絶大な効果があります。
     なぜあなたに効果がないのかというと、すでに知識があるから事実でないと見抜けてしまうからです。しかし、彼らのターゲットは「あなたのような知識者」ではなく、「その他大勢の約99パーセントのほう」なのです。(99パーセントの数字に具体的根拠はないですが、僕の今日までの養った見立てで言っています)→この数字などもも一応「人心掌握操作テクニックのの一種」です。でもこんな感じでほぼ誰もが「大衆操作」を行っています。この大衆操作はどこにでもあります。
    「無知な本人」が気付かないうちに当然にやっているのです。左翼勢力の人はもちろん国家体制の崩壊のために、ほぼ毎日メディア等で行っていますし、これは保守派の人でも変わらないのです。数を集めるために(保守思想への賛成数、保守政党の得票数を多くするため、イデオロギーに賛同しきっていなくても、取り込もうとしています)僕もこれに気付いたときはとまどいましたが、最悪の政権を打倒するために、保守陣営は大分このテクニックによって票を獲得できたと思います。そのおかげで、最悪の政党には政権を降りさせることができました。meguさんは、事実でないことを見抜ける側なので、騙されることはないため、その先のレベルのテーマである、「この情報によって、この人がどちらに無知な人を誘導しようとして、われわれの住む世界をどのような形にしようとしているか?」というところに着目することをお勧めします。そこからが、敵味方の判断になるのではないのかと思います。つまり、残念ながら他人の(情報操作や)ウソを見抜く方法はどんな書籍もあまり参考になりませんし、見抜ける人はほとんどいません。なぜなら、あなたがこのブログで指摘している「レベル0段階のウソ」でさえも「へーそうなんだ」といって見抜けない人ばかりなのですから。となると、そのスキルを早く習熟させることは必須課題となると思います。僕の見てきた経験上、しっかりした知識の習熟、国家観がある人は、10中8、9『実直で嘘が嫌いな人』です。もっと疑いの目で人を見てください。世界はまっさかさまに見えてくるかもしれません。
     「悪者になる」催眠術にかける人、「善人になる」催眠術をかける人両方います。どちらも催眠です。「覚醒」させることのできる人はいません。
     あなたは催眠術が世にはびこっていることに気づきました。
    あなたは『催眠術なんか悪い行為だ』といいます。
    しかし、みんなは「催眠術が存在すること」にも「すでに悪人になる催眠術にかけられたこと」にも気づいていません。
    このままでは、『悪の催眠によって』国民たちが国民自身を滅ぼそうとしています。この世界を救っていく方法は僕にもわかりませんが、本当の敵を見つけ出してください。
     

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